ウィルオブ財団支援者ご紹介 – 手塚悟さん
ドキュメンタリー作品を制作し、海外映画祭での上映を目指して
プロフィール
山梨県・南アルプス市出身。
幼少より母親に地元の映画館に連れられ、ジャッキー・チェンに憧れる。
小学校の担任教師がビデオ制作をしていたことに感化され、同級生と共に映画ごっこをはじめる。
大学在学中に ENBUゼミナールで本格的に映画製作を学び、卒業後は短編作品を中心に活動。
2008年、第6回NHK ミニミニ映像大賞に「サミット ニュース篇」が入選。
2009年『つるかめのように』、2011年『こぼれる』が SKIP シティ国際Dシネマ映画祭をはじめとする国内の映画祭に次々とノミネート・受賞。
2013年、音楽監督にmama!milkの生駒祐子を迎えた『WATER』が、アメリカのリッチモンド国際映画祭ノミネート。
2016年、⻑編『Every Day』が全国のミニシアターで劇場公開され、1年半に及ぶロングランで上映された。
Amazonプライム・ビデオでの配信においても高い視聴数を誇り、2022年には林遣都、瀧本美織出演で朗読劇化。
同年年末のサントリー社・飲食店歓喜CMにもワンシーンが使用された。
株式会社ウィルオブ・ワークには2011年10月より所属。
仕事をしながらコンスタントに作品制作を継続・発表しています。
応募動機
映画の製作スタッフの末端としての日々を送りながら、ある時「あなたの映画を見る観客の日常を知りなさい」という師匠の映画監督の教えに従って、事務職としてお世話になることになったのが、現在の派遣先企業様になります。
おかげさまで職場の皆さんに応援されるという本当に恵まれた環境で、休日を中心にコンスタントに作品を制作・発表しながら、なんとか劇場公開するところまで辿り着きました。
2020年、前作から実に4年ぶりに、亡くなった母のことを映画にしようと準備を進めていましたが、新型コロナウイルスによる世界的な混乱に思わぬ形で遭遇することとなり、クラウドファンディングをはじめとした、様々な支援をいただきながら制作をするはずでしたが、長引くパンデミックの影響に思うような体制を組むことができず、泣く泣く制作中止という決断をするに至りました。
失意と足踏みの日々。その時間、約2年。
再開の見込みがなかなか見えない中で、実家の整理をしたところ、8ミリフィルムや大量のビデオテープが見つかり、デジタルデータ化を試みると、そこには私が生まれる前から続く「家族の姿」が記録されていました。
このまま映画を撮ることもできず引退するのか、という不安もよぎっていたのもあり、それらは当時の私にとっては、希望の光でもありました。
映画監督としての性なのかもしれませんが、家族の記録と現在、実家に暮らす父と私のやりとりを紡いでみようと試みたところ、私にとっては初めての「ドキュメンタリー」のような形をした映画ができあがろうとしています。
そのようなタイミングで今回の第三期の募集を知りました。
ほとんど光を失った自分にとって、心細い背中を優しくそっと押してくれるようなその内容に感化され、この機会をさらに実りのあるものにしたいと強く願い、応募しました。
活動についての紹介
世界の映画制作者は、新作を海外の映画祭に出展します。
何故ならば、のちの世界的なセールスにつなげるためには、どこの映画祭で初上映されたかが重要になってくるからです。
その中でもカンヌ国際映画祭をはじめとする歴史ある映画祭では、その作品をセレクトする主催者自身も自分達が新しい才能を見つけたいという気持ちを強く持って挑んでおり、私自身もこの映画祭での世界初公開を強く望んでおります。
もちろん選ばれるかどうかはわかりませんが、これは大スターが出演するような大作映画と肩を並べる大きなチャンスでもあります。
特に日本国内におけるドキュメンタリー作品の劇場公開は収益の見込みを考えると、海外と比較した際に上映期間や規模が小さくなりがちになるため、国内だけの収益ではなく、海外での上映・展開を考えることがとても重要になってきます。
そして、それは今回だけではなく、次回作を制作する際にも、制作費の支援を世界から受けることができたり、国内外を問わない最適な制作環境へのステップアップへとつなげることができるため、今回の挑戦では、特に海外の映画祭での上映を目指していけたらと考えています。
意気込み
コロナ禍が色々な困難な状況をもたらしたことは確かです。
しかし、視点を変えてみれば、それは世界の境界線が無くなる大きなきっかけでもありました。
全世界がこれだけ「大切な誰かと想うように会えない」という共通の機会を得たのにも関わらず、残念ながら最近になって様々な地域での戦争が起きてしまっています。
今回、思わぬ形で自分の「家族」を記録映像として紡ぐことになりました。
40年以上に及ぶ記録と記憶が紡がれ、フィクションを超えた家族の物語が生まれようとしています。
それは、決して個人的なものに留まるのではなく、パンデミックを乗り越え、混迷するこの世界に対しての「家族」という直球なテーマの問いであり、この問いに対して自分なりの答えを見つけてみたいと思っております。
ウィルオブ財団に対するコメント
コロナ禍をきっかけに、ありがたいことに家族や周りの方との距離は近くなったと感じています。
師匠の言葉を信じ、過ごしてきた時間ではありますが、
仕事と作品制作の両立ができなくなるかも、という不安がよぎりながらも
色々なお話をしながら、自分の作品が届けたい人たちの顔が明確になりました。
そして、作り手としての自分の心の幹も前より太くなったと実感しています。
この度の助成制度は、そのタイミングもさることながら、普段貴社に所属しているというだけでは足りないくらい自分にとっては素晴らしいご縁であると感じております。
芸術という明確な基準も答えもないジャンルではありますが、
感謝の気持ちを忘れずに、この機会をしっかりと活かし、良い結果が出せるように頑張ります。
どうぞよろしくお願い致します。